昨日は、お世話になっている先輩カメラマンさんのアシスタント仕事。もう何年もたまにだけど手伝いに呼んで頂けていて、普段僕が見れないたくさんの現場を見させて頂けている(こういう書き方めんどくさいね)。僕の展示にもほとんど来てもらえたり、いつもお互いの猫ちゃんの情報交換をしている。芸能人というか世間的には超大物と呼ばれる方々(あぁめんどくせ)をたくさん撮ってきた人で、ライトをいくつも駆使し、高級感溢れ、僕の緩い写真とは遥か違う存在にある。
朝、先輩のお宅に向かう時、地下鉄のフリーペーパーに目が止まった。シンガーソングライターで女優でイラストレーターで絵本作家の大塚愛さんのインタビュー記事が載っているので開いてみる。以前、彼女を少しだけ撮らせて頂けたことがあったので(事実だけを書いてカメラマンは箔をつける生き物である)。まず写真を拝見、とっても美しい大人の女性になられている、ための写真でもある、でもそれは事実でもある。記事も読んでみようかなと思ったが、僕の目は読者(編集者)から愛さんへの恋愛相談、Q&Aのひとつにするりと導かれた。結婚を全くする気のない彼に、どうやって決断させたらいいですか?、もう見るのやめ、でも見てしまう。私の周りにもそういう(攻略が難しい)方は結構いますが、みんな運命さえ感じれば、あっけなくしてしまうようですよ。そんなことが書いてある。神秘的でいい回答だなぁと思う。もっとも運命を導くための質問である気もちょっとだけしたけど。フリーペーパーだから持って行こうと思ったけどやめ、仕事仕事。
たくさんの機材を車に積んで、いつもの雑談。先輩は今日撮るお方はよく知らんと言っている(たぶんあえてそう言う人なんだけど)。テーマはファッション撮影で、珍しく女性ということ(いつもは貫禄ある男性の撮影が多い)。僕、少し盛り上がる。肩書きや状況を聞いていくと、僕にとっては超有名人に当たるお方であることがすぐ分かる、どうやら向かう場所的にも。僕も過去にその方を大きく2度、細かくは5度くらい撮影させて頂けた方で(さらに箔を付け付け、塗り固める)、あぁまたお会いすることになるのかぁ。普段見ないようなフリーペーパーに導かれた理由もわかった。今日はいろんな意味で胸が締め付けられそうな日。若かりし日のカメラマンの心情、今は全く違った自分としての、何かのタイミングで起こる再会の仕方。相手方は僕のこと知らないというのが、切なさすら呼ぶ。そして、現在の君はどうなった?、僕は語りかけられる。
あとのことは詳しく書けない。現在の写真のムードとしては、輝く女性たちの時代になっているのは確認できる。僕も歳と共に、もっとちゃんと女性を撮れるようにならないと、この先カメラマンとしては生きていけないのかもしれない(書いたけどそうは思ってもいないところに僕がある)。今年最初、女性誌に使う写真をお願いされたのだけど、いろんな条件で流れちゃったしなぁ(本当はまさに今頃撮影しているはずだった)。
昨日のお手伝いは、いろんな意味でだいぶ消耗した(花粉薬も効いた)。こういう精神的支えに徹する自分は、誰なんだろうと思ったりするが、お仕事はうまくいったようなのでよかった。先輩はほんとすごいなと思う。そして知っていたけど、撮られる側の意識もすごいなぁと思う。この撮影を僕がしていることを想像しながら見ているものだが、まだ、こういう空気の中では写真なんか撮れないと思えたな。僕はほとんどなにもしてないのに、冷や汗、止まらない止まらない、息できないくらい(アシスタントというものに慣れているわけでもないので…)。でもこういう日もないと、自分の細胞を使い切ることはできないのだろう。
本当に面倒見が良い先輩で、写真を勉強しない意志のある僕にも、カメラのいろんなことを教えてくれる(僕は半分くらいしか聞いていない)。仕事後には僕にも使えるような安い便利ライティング道具をネットで注文してくれて、自宅に届けてもらえるまでやってもらえた。撮影現場で誰も手をつけなかったバターサンドを僕のために持ち帰ってもくれた。いつもありがとうございます(よいしょでなく心より)。
#3464-09-10 / Aozora Lighting