2009年、それまではよくわからなかったことだが、なんだか僕はとてもたくさんの人たちに囲まれていたんだな、と感じ始める。毎月のように、結婚式だったり、自分の活動のための写真をお願いされたり。そうなっていくと内省的な部分は徐々に薄れていく。都心で大荷物の外国人にホテルの場所を問われれば、そこまで一緒に歩いて、よい旅を、みたいな僕になっている。
この頃、手帳に簡単に書いた言葉も、僕が僕でなくなればなくなるほど、写真は、物語は、真実へと近づくことができる、だとか、僕の人生は、僕しか知らない、誰かのために生きる時代を待っている。誰かと出会うこと、誰かを大切にすること。そんなのがたくさん目につく。写真を始めて10年、仕事も周囲の環境もやたら安定していることを感じる。衝動から始まった気迫はなくなってしまったものの。安定を楽しんでいない自分を見つけつつも。今までにはないくらい何かを見渡せそうな感じが少しだけある。夏の手帳のページにこうも書いてある。僕は人に安らぎと、幸せと、元気をもたらしてみせる。
そんな頃、大学時代の友人に、作品集作りをお願いした。僕の周りには優秀なデザイナーがとてもたくさんいるのだけど、彼にお願いしたのは、今思えば、お告げみたいなものがあったんだと思う。前年に旅した、フランス、ギリシャ、トルコの旅の写真をたくさん持って、僕らの旅が始まった。写真を選ぶことも彼に任せたくらい、僕は自分に固執するのを禁じようと強く思っていたのだと思う。この尊い制作のことはフォトログを始めた頃にも書いた。夏に始めて確かクリスマスに完成したんだな。作品タイトル、オーギリシャンブール!
この年は、僕を必要としてくれる人たちに心を向け、本当にたくさんの撮影ができた。前年から、高校時代の仲間たちと年に1度、沖縄サミットなる旅に出たりするようになり、僕の大好きな沖縄で楽しい時間を過ごす。今までは一人で旅を続けていたようなところがあるが、美術の分野で暮らしているわけではない仲間たちと過ごすことの素晴らしさを、僕は初めて知れたのだ。
僕は人に安らぎと、幸せと、元気をもたらしてみせる?、一体この変化はどうなっているんだと自分でも不思議でたまらないのだが、翌年からこの新しい自分でやっていくことは、なんとなく感じた。作品集作りをしている頃には、来年すぐにそういう写真展をやろうと決めた。
#3414-09-01 / New Balance