ちょうど１０年前の写真を見ている時がよくある。日々その写真から１０周年、みたいな感じになると、あれ日常ってやつも素晴らしいかな、あほみたいなことを思う。今日の１０年前も歳をとっていく感覚は、長く写真を見続けていると、けっこう楽しいものだよ。

その日は、美大時代からの心の親友、アーティスト神田さおりの結婚式だった。大切な日を迎える前に、絵描きである彼女に対し僕は長い手紙を書いた。お願いをされたのか、どうしてそうなったかは思い出せないのだけど、それは確かに撮影企画書だった。これからの未来を予感させる写真を撮っておこう、みたいな感じだった。すげえなあ。

１０年前の僕は人に手紙を書くのが大好きで（パソコンないし携帯にメール機能ないしで）、ちゃんとコンビニに行ってコピーもとってある（笑）。最近、旅の前の身辺整理をしている時にそれが出てきて読んだんだけど、あまりに熱い内容でとても最後まで読めなかった（笑）。でも彼女はそれをいつまでも大事にしてくれているらしく、まあ書かなかったよりは書いてよかったなと、たまに彼女の声を聞くたびに思う。当時の僕のことだから、世界を目指すために、みたいなことを書いていたことだろう（恥ずかしい）。

式の直前だったかな。この革パンにペイントしてもらったのは。これには思い入れがあって、宮古島に住んでいる心の友と、島のブックオフで１５００円で買ったものだ。こんな暑いところで誰がこんなの履くんだって、楽しかったんだよ。島を共に駆け抜けた記念みたいなものだった。それに彼女にお願いして描いてもらったんだな。

いつか写真をやめたくてしょげていた頃にも、カメラにペイントしてもらったりした。いつもなにかのタイミングで必ずドアをノックしてくれるような人だった。ふっと当時を共にした友達のことが浮かんだりするよね。みんなどこにいったのかなって、わからなかった時代の方がたぶん美しかった気がするな。知れないほど相手を思える感覚は大事にするべきで、これがやがてみんなできなくなっていくだろう。

寒くなってきたね、おでんでも食べようよ。今あの人は、佐藤くんのようなパワーを必要としていると思うの。撮らないでいると、撮らないことが平気になっちゃうよ。たまには誰かの魔法にかからないと持たないよ。友としていろんな助言をくれたものだなあ。僕はあまり素直に聞かなかったよな。

また１０年前。ペイントしてくれた実際１５００円の革パンを履いて、結婚式に出席したはいいけれど、僕は写真をあんまり撮らずに過ごしたのが情景として残っている。１０年前の僕が写真を撮らずに過ごしたことは、相当苦しかったことだろう。そんなことよりまだフィルムでお金がかかったので、明日のごはん代やらと祝儀をはかりにかけて、切羽詰まっていた自分の方こそをよく思い出す。いや今もそんなに変わらないかなあ。

書いて色々思い出しているうちに日付もかわった。１０年後の彼女と、そのあとの予感についても語らえることを。ふたりには、心よりおめでとうを。

paint：Saori Kanda

 

 

＃3158-05-12 /  A Hunch 2（Leather Pants Ver.）